放射線治療部門

放射線治療部門の説明

当院では、悪性腫瘍や一部の良性疾患(甲状腺眼症やケロイド)に対する照射、悪性腫瘍の術前や術後照射、造血幹細胞移植の前処置としてのTBI(全身照射)、肺のSBRT(体幹部定位放射線治療)を行っております。
また、前立腺がんの密封小線源治療も行っています。前立腺の小線源治療では、放射線の影響による腸への副作用を減らす目的として、ハイドロゲルスペーサーを留置しています。
いずれも病院内からだけでなく、病院外からも治療依頼を受けています。

なお、当院は大阪府がん診療拠点病院の認定施設として認定されています。

当院の放射線治療

体外照射

放射線治療科の初診に引き続いて、専用の治療計画用CT装置を用い、病巣や再発を予防したい部分の三次元的な広がりを確認したり、他の検査画像や病巣の呼吸や消化管の嬬動などによる動きの可能性などを考慮して照射する範囲を決定します。一般的にはその翌日から週5回(月曜日から金曜日まで、総回数は治療目的などにより異なります)の治療を開始します。

1回の治療時間は3分程度ですが、入退室や位置合わせ等で10~15分位かかります。第1回目の治療時は照射位置の確認などのため少し時間がかかります。予約時間を細かく設定することで、ご希望の時刻に来院していただけるよう努めており、治療期間中も仕事を続けておられる方々のご好評をいただいています。

全身照射
(Total Body Irradiation:TBI)

全身照射(以下、TBI)は造血幹細胞移植の前処置として行われています。TBIの目的は患者体内の腫瘍細胞を根絶させること、そして患者の免疫(リンパ球)を抑制し、ドナーの造血幹細胞が拒絶されるのを防ぐことです。

処置の概要として、TBIは言葉の通り全身に放射線を照射します。当院では治療直前に患者さまの体表面に半導体線量計を貼付け、体内に投与される線量をリアルタイムに計測することで、より安全な治療に努めています。照射時間は1回につき50〜60分程度で、通常2回から6回行います。照射には長時間を要しますが、当院はTBI専用寝台を備えており、天井カメラで患者さまの様子を観察しています。またお手元には非常用ブザーをお渡ししています。

スタッフ一同、患者さまと常に必要なコミュニケーションをとれる状態を作り、安心して治療に臨んでいただけるよう配慮しています。

体幹部定位放射線治療
(Stereotactic Body Radiation Therapy:SBRT)

体幹部定位放射線治療(以下、SBRT)は、肺や肝臓など体幹部の比較的小さな病変に対して、多方向から放射線を集中的に照射する方法です。治療期間を1週間程度と短くでき、従来法よりも有効な場合があるとされていますが、呼吸などによる病変の動きに対する配慮や大線量を照射するため、高度な技術が必要とされます。

当院では、近年の画像誘導放射線治療の技術を用いて、腫瘍の呼吸性移動を考慮した高精度な治療を行なっております。

SBRT時の体幹部固定の様子 写真
SBRT時の体幹部固定の様子

画像誘導放射線治療
(Image Guided Radiation Therapy:IGRT)

画像誘導放射線治療(以下、IGRT)は、近年急速に発展してきた位置照合技術の総称です。IGRTでは、治療の直前に治療寝台上で撮影した2次元平面画像や、コーンビームCTと呼ばれる3次元画像などを用いて、治療目的位置まで患者をミリメートル単位で誘導することが可能で、高精度放射線治療には欠かせません。

また、当院の治療装置にはELEKTA社のsymmetry(シンメトリー)を搭載しており、4次元のコーンビームCT撮影も可能で、呼吸性に動く腫瘍位置の確認や治療の安全性に役立てています。

小線源治療

当院では、前立腺癌の治療目的で密封した放射線同位元素を前立腺に挿入する治療を行っています。詳しくは泌尿器科のページをご参照下さい。

治療方法について

放射線治療専門医、看護師と共に、放射線治療とはどのようなものなのか、治療期間、日常生活の注意点、有害反応などの説明を行い、その内容を十分理解して頂いて同意を頂いてから治療を開始します。放射線で治療する範囲を正確に決めるために、治療計画用CT装置で範囲の位置決め撮影をします。治療計画専用のコンピュータで適した治療の範囲、放射線の量、治療の期間を決定します。また、誤った照射がされないように照射に必要なデータをすべてコンピュータに登録して、治療のたびにそのデータと照合しています。マルチリーフコリメーター(コンピュータ制御の鉛製のブロック)で、病気以外の部分に放射線があたらないように精密に計算して照射しています。

放射線治療は、基本的に寝台の上に仰向けに寝て行います。疾患によっては、シェルと呼ばれる固定具を装着し、容易に動かないように制限されたりする場合もありますが、放射線治療による痛みや熱さ等を感じる事は全くありません。治療中に身体を動かすと、患部に十分な放射線があたらなかったり、まわりの正常部分に悪影響をおよぼす可能性がありますので、動かないように気を付けていてください。また、治療中は一人になりますがTVモニターにより操作室で見ていますのでご安心下さい。

機器の精度管理、品質管理について

高精度治療に必要不可欠なものは、使用する機器の特性、精度管理や品質管理です。医用電子加速装置の品質管理の実施は、装置の性能を維持し、安全かつ事故防止の目的で行われます。毎日の始業点検のほか、法定で定められた定期点検や保守点検などメーカーとの連携を行っています。機器導入時に各種測定機器も揃えられ、ビームデータ収集に使用する3D水ファントム、測定用の各種線量計、平面型と円柱型の半導体検出器、解析装置も揃えています。

ブルーファントム2画像
ブルーファントム2
アークチェック写真
アークチェック

機器の紹介

当院ではELEKTA社製の放射線治療装置を導入しました。この治療装置はIMRTやVMATなどの強度変調放射線治療に対応しています。従来より精密にマルチリーフコリメータの位置調整ができるため、正確な治療を行う事が可能です。
また、治療室内でレントゲンやCTのような2D画像や3D画像を撮影して、治療直前に位置の確認を行うことができます。

ELEKTA社製 リニアック装置 Synergy写真
ELEKTA社製 リニアック装置 Synergy

当院ではキヤノンメディカルシステムズ社製CT装置を導入し、治療計画を立てるためのCTを撮影しています。
従来の装置と比較して大径口のCTとなっており、実際の放射線治療時と同じ姿勢を取っていただく事が容易になりました。
大径口CTの利点の例を挙げますと、両腕を挙げて治療計画用CTを撮影する場合に、従来ではCTの筒に肘などが当たる事がありましたが大径口CTではその心配がありません。したがって、腕を挙げる際に痛みがあれば腕を高くした状態で撮影できる等、患者さまの状態に配慮した撮影が可能となっております。

キヤノンメディカルシステムズ社製 治療計画用CT装置 Aquilion LB写真
キヤノンメディカルシステムズ社製
治療計画用CT装置 Aquilion LB

診療科紹介・部門